News Letter SS研HPCフォーラム2004 〜開催趣旨〜
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岩宮敏幸 (宇宙航空研究開発機構 総合技術研究本部)
おはようございます。
只今ご紹介頂きました、宇宙航空研究開発機構の岩宮と申します。 企画委員の一人として開催趣旨をご説明させていただきます。

まず私事ですが、宇宙航空研究開発機構というのは、昨年の10月に、国内の宇宙関係3機関、宇宙開発事業団、航空宇宙技術研究所、宇宙科学研究所の3つが一緒になって出来た機構です。 まだ充分に皆様にも名前は浸透していないかと思います。 通称JAXA(ジャクサ)と呼ばれる組織で、少しPRさせていただきたいと思います。

さて、既にニュースでご存知のことと思いますが、IBMのBlueGeneがLinpackにおいて、地球シミュレータの記録を抜いたというのがニュースで流れておりました。 アメリカも着々と計画を進めていて、いよいよペタという時代が目の前に来ているのかな、と思います。 ペタを目指して色々なハードウェアやソフトウェア、あるいはコンパイラ、開発言語、といったものが一気に集約して実際に本当に使えるペタの環境というものが求められていくことになると思います。

特に私自身は"宇宙"あるいは"航空"という組織に属していまして、これまでスーパーコンピュータを利用する最先端の分野であったと自負しておりますが、我々の分野で考えますと従来からやってきた流れのシミュレーションという非常に計算負荷の高いもの、流れの基本方程式であるナビエストークス方程式をそのまま解いて乱流や燃焼などを詳細に求める計算、他の分野で言いますと例えば第一原理計算のようなものですが、これにはペタという世界が必ず必要です。 これは、ペタという計算機環境を利用して、新しい現象の解明につなげていくという方向です。

それに対しまして、新たに一つHPCというものを引っ張って行く可能性のある新しい方向として、たとえば、遺伝子解析のようにデータを生み出すことも大事なのですが、生み出された大量のデータの中から、有用な知見を生み出して行くという分野というのがHPCの中でこれから重要になっていくのではないかと思います。

我々の分野においても数値シミュレーションの利用は従来の、航空機や宇宙機の性能を評価するというところから、"設計"への利用という方向にどんどん動いています。 設計ということになると沢山の要求の中からお互いに妥協しながら、より良い着地点を求める必要があります。 どういう戦略でデータを作り出し、得られた大量データから、何を探し出していくのかというのがもう一つの流れだと思います。

HPCというのは、そういう2つの側面から今後語られていくのかな、というのが、企画委員の皆さんの認識のようでした。

今回、今後のペタコンピューティングということを念頭に置いて、今、どんな状況にあるのか、ということをそれぞれの分野で先頭を走っておられる方に総括的なお話をして頂ければ、ペタの世界に向けて、今後の我々の活動に生かしていけるのではないかということで企画させて頂きました。

ハードウェアの関連では九州大学の村上先生にペタに向けてのアーキテクチャのお話をお願いしました。 アプリケーションにつきましては、理研の戎崎先生、東海大の平山先生にお話を頂きます。 戎崎先生には天文というアプリケーションを中心に新たな計算機の開発のお話も含めてお聞かせ願えるのではないかと思っております。 東海大の平山先生には今ホットな話題であります計算機上で創薬するというところでの現状と色々な今後の方向性というものがお聞かせ願えるのではないかと思っています。 海外からは、カリフォルニア工科大学兼NASAのジェット推進研究所のThomas Sterling先生にお越しいただきまして、アメリカでのペタに向けての計算機のアーキテクチャの動向について、先生自身が提唱されているアーキテクチャを含めてお話願えるのかな、と思っております。 最後に、富士通からの報告ということで、実際にそういったコンピューティング環境が出来た時に我々ユーザにとって非常に関心のあるプログラムの開発環境に対してどういうプログラミングパラダイムを考えているか、ということを紹介して頂きます。

HPCフォーラムというのはSS研の中でもオープンなフォーラムということで、我々の活動をSS研の会員だけでなく、広くそれ以外の方にもフォーラムに参加して頂いて意見を交換できる機会が設けられればと思い、オープンフォーラムという形にしております。 最後まで活発な議論をお願いしたいと思います。

企画委員を代表して開催趣旨の説明をさせて頂ました。 どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)