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3.人間の「笑う能力」、人間は「笑う存在」

 人間誰でも笑います。基本的なことなのですが、どうして人間は笑う能力を持っているのか、この証明はまだ出来ていません。 動物を研究する先生方でチンパンジー、ゴリラ、霊長類の類は笑いの表情を持つという観察結果のレポートを出している方がお られます。霊長類になって初めて笑いの表情が見えてくる、つまり笑いの感情を持って、笑いの表情がついてくるのかな、と私 も思っております。
 人間は笑いをふんだんに使っています。古くはアリストテレスが言ったというのですが、笑うのは人間の特権である、笑うの は人間だけだ、という言い方があります。霊長類の一部がそういう表情を示す時があるにしても、私は笑うのは人間だけだと考 えていて良いのではないかと思います。これほど笑いを生かして使っているのは人間しかないのですから、やはり笑うのは人間 だけだと考えていて良いのだと思います。笑う能力が人間には生まれながらにして備わっているのです。それはどうして分かる のでしょうか。
 人間が生まれ出て初めて見せる笑いというのが生後4〜5日とか1週間とか、個人差はありますが、ニコッと笑う表情が出て来 ます。エンジェルスマイルとか、新生児微笑とも言われています。スヤスヤと眠っている時にフワ〜ッと浮かんでくるのです。 これは学習してそういう笑みを浮かべるわけではありません。たまたま不幸にして目が見えない、耳が聞こえないという赤ちゃ んでもそういう表情が出てきます。これは生得的なもの、人間が生まれつきにして持っているという証拠ではないかというわけ です。私も実はそれを信用しています。ですから生まれてすぐに新生児が見せるなんとも言えないあの笑顔、あれが人間生まれ 出て初めて見せる笑いではないかと思っております。
 私は2002年度の「国際ユーモア学会」(国際的にもユーモア学会があります)で、そのような私の考え方を述べました。つまり、 人間が生まれ出て初めて見せる笑いが新生児微笑である、と申しましたら反論がありまして、あれは笑いではない、と言われま した。ヨーロッパの学者ですが、あれは痙攣である、と言われてしまいました。身体的などこかが緊張を緩めるとか、そういう 痙攣ではないかと言われました。ここのところについてはまだ定説はありません。しかし、私はあそこから人間の笑いが始まる のだという自説を述べただけなのですが、決着はついていません。
 人間は生まれながらにして笑う能力を秘めている、長い人類の進化の歴史の中で、そういう能力を持ったと私は思います。 それがずっと連綿として受け継がれているのではないかと思います。遺伝子のどこかに笑いを誘う遺伝子があるのではないかと いう考え方をしたりします。しかし、それは証明されていません。
 私はなぜ人間が笑う能力を持ったのかということで、二つの理由を考えています。一つは、人間は生まれたらやはり元気に生 きる、健康に生きる、というのは生物ですから至上命題です。この元気に生きるということに笑いは関わっていたに違いないと いうことです。最近でこそ自然治癒力という言葉も出てきましたが、やはり笑いというのはそういう自然治癒力みたいな働きを していたに違いないし、今日もしていると思います。そういう元気に生きる力に笑いが関わっていたに違いないと思います。 この話はまた後でしたいと思いますが、それが一つの理由です。
 それからもう一つ、人間は一人では生きられない、ということです。必ずまずは親に育ててもらい、そして仲間と共に生きな いと人間は生き延びていけないのです。今日でも戦争は尽きません、あちこちで殺し合いが絶えません。しかし人類が生き延び て行く為には仲間と共に生きるということが無ければ存続は難しいのです。ということは、やはり仲間との関係、それを調整し、 仲良く関係を取り結んでいく、そのことの為に笑いというのは関わっているのではないかと思います。
 私はこれら二つの理由から人類の長い進化の中でそういう能力というのが人間に備わったのではないかと思っています。


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