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開催趣旨

企画委員 : 松澤 照男(北陸先端科学技術大学院大学情報科学センター)

    皆様、こんにちは。

    ただいまご紹介いただきました北陸先端科学技術大学院大学の松澤です。

    これまで合同分科会の準備を進めてきました企画委員の皆様、また、それぞれの分科会の準備を進めてきました各分科会の企画委員の皆様、そしてSS研事務局の皆様を代表しまして、今年度の合同分科会の趣旨説明をさせていただきます。

    今年度のメインテーマは、先ほど永安会長が申し上げましたとおり、「サイエンティフィック・コンピューティング環境を考える」となっております。ご存知のように、今年のノーベル物理学賞は小柴先生が選ばれました。カミオカンデ、それに続くスーパーカミオカンデにおける実験観測システムの業績で、ノーベル物理学賞が贈られたと聞いております。そのような実験観測システムで、情報システムが、少なからずその成果に寄与したのではないかと思っております。ちみなにSS研でも数年前から、スーパーカミオカンデの情報システムについて、科学技術計算分科会等で、いくつか報告されております。そういう意味で、今回のテーマはタイミングのよいテーマではないかと思っています。また、ノーベル化学賞も島津製作所の田中さんが受賞されました。Web等で拝見しますと、センサー部分が非常に強調されております。センサーも非常に重要ですが、そのセンサーからの情報取得制御および後処理、特に画像処理などにもソフトウェア技術も使われており、田中さんの受賞にも情報処理技術が少なからず貢献したのではないかと思います。以上のように今年度のノーベル賞の受賞には、センサーも情報処理技術の一部とするなら、情報技術が今回のノーベル賞受賞に、非常に貢献したと考えております。さらなる科学技術を発展させるために、今後のサイエンティフィック・コンピューティング環境をどう構築するかについて、多方面から討議を深めてまいりたいと思います。

    このテーマに関連して、明日の午前中、討論会がございます。討論会テーマは「組織を超えたグローバルサービスの実現」です。昨年来、SuperSINET、あるいはITBLなどのプロジェクトが開始され、今年の5月には、Grid研究の日本の中心的な場となるGrid協議会が設立されております。この協議会を中心として、わが国のGridに関する標準化、研究開発、あるいは実用化などが促進されるものと期待しており、Grid技術は今後無視することのできない技術になるものと思います。その一方で、国設の研究所、あるいは国立の大学においては、ひと足はやく研究所が法人化され、国立大学も近いうちに法人化に進むということで、準備段階に入っていると聞いております。ここに出席されている多くの方は、それぞれの機関の情報科学センター、あるいは情報センター等に所属されていると思っております。これまで情報科学センター、あるいは情報センターは、情報処理技術の普及と促進に中心的な役割をもっていたと思われます。もちろん、今後もその役割が続くと思われますが、大学や研究所を取り巻く環境の変化の中で、センターがどのように対応していくべきかを、是非明日の討論会で明らかにしていきたいと思います。討論会のパネリストは、その分野で先進的に活躍されている方をお招きしており、コーディネータは明治大学の阪井先生が勤められます。非常に有意義な討論会になると期待しております。

    さて、今年度の特別講演は、京都大学の益川先生にお願いしました。ご存知の方も多いと思いますが、素粒子論に関する世界的な研究者です。SS研でも何年も前からご講演をお願いしていたのですが、なかなかお忙しいとのことで、ようやく今年、実現することができました。本当にお忙しい中、ありがとうございます。

    明日の朝になりますが、富士通研究所の宮澤取締役に「ALL-IPが拓く次世代ITシステム」というタイトルで特別報告をしていただきます。討論会でのグローバルサービスの実現との兼ね合いで、是非、富士通の最先端のITを拝聴したいと思っております。

    次に一般講演は会員側のご講演ということで、航空宇宙技術研究所の岩宮先生に「統合シミュレーションシステムと第V期数値シミュレーションシステムの構築」というタイトルでご講演をお願いしております。新しい数値シミュレーションシステムとITBLとの関係についてご講演をお願いしております。非常に興味深いお話が聞けるのではないかと思います。

    そして、最後の企画になりますが、明日の文化講演に、明治大学の齋藤先生をお招きしております。「日本語力と身体感覚を鍛える」というテーマでご講演をお願いしております。齋藤先生はご存知の方も多いと思いますが日本語に関する著書を数多く発表されております。ちなみに、私もその中の一冊、つい最近、岩波新書から出ました「読書力」という本を読まさせていただきました。ここでは読書力の重要性を書いておられると同時に、日本の科学技術の基盤は読書力にあると、不況の原因も読書力不足にあるというようなことも主張されております。明日も楽しいお話が聞けるのではないかと期待しております。

    さて、今年度も各分科会は並列で開催いたします。先ほど、永安会長からもご紹介がありましたように、システム技術分科会は「無線LAN」、研究教育環境分科会は「e-Learningは定着するのか」、科学技術計算分科会は「見えてきた最新並列技術」というテーマで、それぞれ別々の会場で行われます。今年度も昨年度と同じように夕食をはさんで開催され、夕食後は三分科会並列しての分科会懇親会が行われます。アンケート調査によりますと、この分科会懇親会の評価が一番高いという結果がでております。そういう意味で、今夜は、場外乱闘といいますか、デスマッチといいますか、充分、夜を楽しんでいただきたいと思います。

    またその他にも、WG等報告やリサーチ・エキジビット/デモの企画がございます。今年度、リサーチ・エキジビット/デモ展示は明日だけの開催となっており、HPCミーティングでは開催されません。是非とも明日にご覧になっていただきたいと思います。

    最後に一言申しあげたいと思います。永安会長も少し触れられておりましたが、今朝、富士通関連の報道があり,赤字決算と人員整理について報道されておりました。昨年も同じような人員整理の報道がなされていました。どうもこの合同分科会は9月期決算の発表時期と重なっているので、少し日程をずらしたほうがいいんじゃないかという感じもします。(笑)

    さて、そういう冗談はさておいて、昨年も富士通にエールを送った記憶があります。ユーザというのもある意味では、ベンダーにおんぶしているところもあります。是非、富士通に元気になって欲しいと思います。そういう意味でベンダーとユーザとが有意義な討論を通して、皆が元気になる会にしたいと思います。永安会長が仰ったとおり、ユーザサティスファクションというのは、会に積極的に参加することが非常に重要なキーポイントになると思います。そういう意味で、討論、あるいは懇談会等に参加して、おおいに議論していただき、有意義な会にしたいと思います。

    最後に、皆さんのご協力をお願いして、私の趣旨説明とさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。(拍手)


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