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3.e-Learning普及の需要側の要因 3.1 高等教育人口の増大 e-Learningが普及する需要側の要因として、もっとも基礎的な条件は、それを必要とする高等教育人口が存在することである。1990年代に入ってアメリカは、高等教育人口は増大傾向を示しており、それは少なくとも今後10年間は続くとされている。表1は、1999年の実数にもとづいて2011年までの年齢コーホート別による高等教育人口を予測したものだが、高等教育在学者が全体で300万人弱増加することが見込まれている。その増分をみると、高卒者である18-19歳、20-21歳がそれぞれ約70万人ともっとも多いが、これら伝統的な学生層だけでなく、22-24歳、25-29歳がそれぞれ約50万人、30歳以上が約40万人と非伝統的な学生層もそれに近い程度増加することに特徴がある。 すでに、アメリカの高等教育在学者の約半数は、22歳以上の学生によって占められているが、その傾向は今後も大きくは変わらないようである。非伝統的なタイプの学生の多くは有職者であることは容易に想像がつくが、職業を継続しながら、あるいは、いったん職を離れて大学へもどって学位を取り直すというのが、アメリカの大学生の姿なのである。有職成人が大学へもどる場合、e-Learningという形態を利用すれば、職業を離れる必要はなく、その分の収入を確保できるため、機会、費用の点でメリットが大きい。有職成人にとって、いつでも、どこでも学習でき、かつ、双方向のコミュニケーションが確保されている学習形態が、学習の継続性という点でもメリットがあることはいうまでもない。e-Learningが普及する第1の条件は、こうしたところに存在している。 表1 アメリカの高等教育人口 (1,000人) 総数 199914,791 201117,688 増分2,897 14-17歳 143 224 81 18-19歳 3,414 4,111 697 20-21歳 2,989 3,716 727 22-24歳 2,435 2,928 493 25-29歳 1,870 2,355 485 30-34歳 1,145 1,405 260 35歳- 2,796 2,948 152 出典: National Center for Education Statistics (2001) Projections of Education Statistics to 2011. 注: セルの数字は1,000人単位で四捨五入されているので、年齢コーホートの合計は総数にはならない。 3.2 学位再取得の経済効果 それでは、なぜ、有職者が大学に戻って学位の再取得をめざすのだろうか。これは、アメリカ社会の労働市場の構造に起因する問題である。学歴別に給与が分断されているために、学位の再取得によって昇進や転職なども関わって、収入が大きく増加するのである。それを、表2より確認しよう。 表2 学歴別年収 (ドル) 学歴 年収 学士を100.0としたときの比率 高卒 30,400 58.2 準学士 38,200 73.1 学士 52,200 100.0 修士 62,300 119.3 専門職学位 109,600 210.0 博士 89,400 171.3 出典: U.S. Census Bureau (2002) The Big Payoff: Educational Attainment and Estimates of Work-Life Earnings, U.S. Department of Commerce.{http://www.census.gov/prod/2002pubs/p23-310.pdf} 注: 25-64歳有職者の1997-1999年の平均年収。 ちなみに、学士の学歴所有者の年収を100とすると、高卒者はその60%弱、準学士は約70%でしかなく、2年から4年の教育年数の差が、これだけの給与の差となっているのである。学士と修士の間にはさほど大きな差はないが、MBAに代表される専門職学位になると学士の2倍の年収を得ることができるのである。それは、学士と博士の差よりも大きく、給与という点で専門職学位の市場価値の高さを明らかにみせている。たとえば、MBAの場合、学士号を持っている者が、最短で2年、通常3年のe-Learningによる学習を経てその学位を取得すれば、年収が2倍になる可能性が秘められていることが、多くをe-Learningに向かわせている、第2の条件と考えてよいだろう。
3.1 高等教育人口の増大
3.2 学位再取得の経済効果
ちなみに、学士の学歴所有者の年収を100とすると、高卒者はその60%弱、準学士は約70%でしかなく、2年から4年の教育年数の差が、これだけの給与の差となっているのである。学士と修士の間にはさほど大きな差はないが、MBAに代表される専門職学位になると学士の2倍の年収を得ることができるのである。それは、学士と博士の差よりも大きく、給与という点で専門職学位の市場価値の高さを明らかにみせている。たとえば、MBAの場合、学士号を持っている者が、最短で2年、通常3年のe-Learningによる学習を経てその学位を取得すれば、年収が2倍になる可能性が秘められていることが、多くをe-Learningに向かわせている、第2の条件と考えてよいだろう。