News Letter HPCミーティング2001 〜Q&A〜
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「産業技術総合研究所における計算科学 : ナノからマクロまで」に対するQ&A
 
1.会場にて
 
Q : 1ヶ月位前につくばでカーボンナノチューブのシンポジウムというのがあり、私も参りまして非常に面白い話を色々と聞いたのですが、カーボンナノチューブの計算科学から見て課題や展望というのは何かございますでしょうか?
A : 非常にたくさんあると思います。 カーボンナノチューブは色々な事に使われています。
例えば色々な分子や原子を中に閉じ込めようという試みがあります。例えばカーボンナノチューブの中にfullereneを入れるとか、カーボンナノチューブの中にlithiumを入れてlithium電池に使おうとか、色々な試みがありますけれど、そういう物がカーボンナノチューブの中にどの様に入っていくのか、中で安定に存在するのか、そういうことはなかなか実験的にはよく分からないところがあり、計算で調べられることと思います。
それから、カーボンナノチューブの巻き方は実験的にはコントロール出来ないのです。 カーボンナノチューブはカーボンのシートをどう巻くかによって全く性質の違う物になります。 ですから、例えばlithiumを閉じ込めるにしても、どういう巻き方のものが本当にlithiumを閉じ込めるのか、それも実験的にはなかなか分からない問題です。
カーボンナノチューブの非常に重要な応用として、最近はフラットパネルの発光素子として使われていて、特に韓国は非常に力を入れています。 一昨日まで開催していた台湾での会議でも韓国からの発表者の中にはかなり沢山カーボンナノチューブの発光の問題を研究しているグループがおりました。 問題としては、カーボンナノチューブのどの部位が一番電子の引き抜きに有効なのか、しかも、例えばカーボンナノチューブを普通の状況で使おうとすると、そのEdgeはキャップされているか、水素で抑えられているのか、酸素が張りついているのかとか、そういう色々な状況が考えられます。しかし、実験だけでは、その端がどうなっているかはなかなか分からない訳で、どういう状況であればどの程度の電子放出の効率があるかとかが問題になります。
ありとあらゆる問題がカーボンナノチューブは計算科学的に挑戦課題になっていると思います。 我々は実はそうした事情は前々から認識していたのですが、あまり沢山競争相手が居るので、カーボンナノチューブの研究に取り組むのには多少hesitateしていたのです。 しかし、我々のところでかなり有効な計算手法の開発が進んできました。先程お話しした様に2000原子位のカーボンナノチューブはもうかなり簡単に扱えます。 あの計算はワークステーション1台で実行した計算です。 この程度に簡単に扱える様になったので、本格的に取り組もうと思っています。
 

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