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「話題提供」 共通テーマ:高速ネットワーク

遠隔教育と高速ネットワーク


神沼靖子氏

前橋工科大学情報工学科 神沼 靖子
kaminuma@maebashi-it.ac.jp


     マルチメディア教材を利用した遠隔教育、遠隔学習、さらには遠隔学校などが始まっている。しかし、現実社会においては、誰でも何時でも何処でも利用できる個人の学習環境を整備することは容易ではない。たとえば、我々が実験している「マルチメディア教材を蓄積または発信し、複数のネットワーク環境を経由した教材のユーザ環境での品質評価」では、帯域の狭いネットワークが含まれると映像が固まってしまうという問題がしばしば生じている。このため、マルチメディア教材の共用においては、マルチメディアをどのように表現するのか、データを蓄積する大容量メディアを如何に配置するのか、映像情報の最適な配信をするために如何に情報伝達メディアを整備するのか、などが重要な検討課題となっている。
     我々の「マルチメディア・モデルキャンパスの構築と実証実験」では、分散されている教育支援情報や学術情報を有効活用して、双方向遠隔教育・人材育成を容易にする目的で実現できる環境についても調査してきた。これらの実証実験において、エンドユーザが不充分と評価している事項には、情報ネットワークの重さ、伝達される教材における画像や音声の質に関するものが多い。このことからも、人間の情報行動において、常に要求されることは、日常生活で馴染みやすい情報表現であり、違和感のない情報伝達速度であることが推測できる。個人生活における高速ネットワークの活用側面がここにある。  現実社会では、低速と高速の情報ネットワークが入り乱れているために、発信者から受信者まで情報が届く間に、満足できる質ではなくなってしまうという状況が発生している。教育での高速ネットワーク利用は、豊富な情報の共有、高質のコンテンツの供給が重要である。情報ネットワークが人間のコミュニケーションを支援するという視点に立つならば、高速ネットワークは一部地域ではなく、利用を望むすべての人々にサービスを可能にすることが望ましい。
     一方、情報ネットワークを何のために使用するのかという議論もある。ギガビットネットワークは敷設されたが、利用状況は従来ネットワークの利用方法と何ら変わっていないという話をよく耳にする。その原因は何処にあるのだろうか。  教育用マルチメディアコンテンツの作成が追いつかない問題がある。閉じた教室での教材利用とオープンな環境での教材共有の違いがある。それは、技術的な問題よりむしろ社会的・政策的な問題であると考えられる。たとえば、著作権、意匠権等々の問題もテキストベースの教材では想像できない新たなさまざまなトラブルを引き起こすことが予見されている。

    OHP資料(PDF:117KB)

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