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「話題提供」 共通テーマ:高速ネットワーク

高速ネットワークとグリッド


関口智嗣氏

産業技術総合研究所 関口 智嗣
s.sekiguchi@aist.go.jp


     従来のWebを革新的に発展させた次世代のインターネット利用技術のことである。グリッド技術はWeb文書だけでなく、ネットワークに接続された多種多様な情報資源(携帯端末、個人用PC、スーパーコンピュータ、データベース、センサー、観測装置、人、ソフトウエア、表示装置など)に柔軟にアクセスし、動的に変化する環境の中で、圧倒的な大容量データを総合的に取扱うシステム(ソフトウエア、ネットワーク、ハードウエア)を構築し高信頼かつ安全に利用するための技術である。インターネットを電力網(グリッド)に準えていつでも、誰でも、どこからでも、電気製品のように瞬時に一様なサービスが提供されることを目指したものである。
     「ネットワークがコンピュータである」という言葉があるが、グリッドはネットワークにおけるOSのような役割を担う。すなわち、PCにディスクやCD−R、MO、メモリカードといった異なるデバイスを付け加えたときに、ドライバがインストールされることにより、それぞれのメディアの詳細な違いは吸収され、ユーザから見たときに、いずれも外部記憶装置として簡単に読み書きすることが可能となる。これと同様に、ネットワークに様々な情報資源を付け加えたとしてもユーザは同じ操作でこれらのものを使用することが可能となる。
     米国においては2001年度予算ではグリッド技術等に$630Mを投資し、アルゴンヌ国立研、ロスアラモス国立研、NASA、イリノイ大、インディアナ大、カリフォルニア大学サンディエゴ校、南カルフォルニア大学等、参加機関は多数ある。欧州も同様にEuro 200M規模の投資がある。CERNをはじめ各国の大学、国立機関等が参画している。
     Webが出たときに現在のような発展を誰も予想できなかったのと同様なことが、グリッドにおいても起きている。グリッド技術の研究開発には高速鉄道網のように基盤整備とそれの利用や付随したビジネスという両面がある。現在は、国際的な活動の中で基盤整備を行っている段階であり、ビジネス応用は今後の発展に期待するところである。
     ネットワーク技術の発展に伴ってWebからグリッドに発展していくのは必然であり、オープン化、インターネット、オープンソース等への対応で遅れをとった我が国は同じ失敗を繰り返してはならない。現在 Global Grid Forum (http://www.gridforum.org/) がグリッド技術の標準化と相互運用性に取り組む唯一の国際的組織であり、年3回の会合と欧米から約350名の参加がある。こうした活動への積極的な貢献が今後求められて来るであろう。

    OHP資料(PDF:1847KB)

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