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2. 情報基盤による知識創造循環の形成

     戦後最大の政治学者・思想家である丸山真男は、福沢諭吉の「知恵」の構造的解釈について分析した上で、現代の情報社会の問題性は、情報最大・叡智最小3)の逆三角形をなしていることと指摘している4)。ここで「情報」とは、無限に細分化され得るもので、真偽が一意的に決まるものである。図-2に示すように、情報がある種のフィルターを通して付加価値が加えられて、情報→知識→知性→叡智と昇華されて行く中で、知識とは知性と叡智を土台に情報を組み合わせたものであり、知性とは理性的な知の働き、叡智とは庶民の知恵とか生活の知恵とか言われるものに近いものとしている。
    図2
    図-2:情報とは?

     ここにおいて、前半の知識生成までは大学における情報基盤が深く係わるものであり、後半の知性、叡智は情報基盤の利用者である研究者等個人のパーソナリティに属するものである。とすれば、情報流通の速度と時空を超えた情報のアクセスが知識情報社会のキーワードとなっている今日、大学の使命は情報最小・叡智最大に向けて大きく貢献することではなかろうか。

     一方情報の価値を理論的に体系化したのがシャノンとウイナーであるが、それによって確立された情報理論によれば、情報量はその情報が発生する確率の逆数の対数で表わされる。平均情報量は情報エントロピーといい、情報の不確定性を示す指標となる。従って情報の確定性を上げて付加価値を高め、情報最小・叡智最大にすることは、エントロピーを低減することでもある。

     大学においては、外から受け入れた情報に高次の編集・加工を加えて教育・研究に活用し、それが新たな知識・知見を生み、更にそれが蓄積・共有されて外部に発信される。こうして生まれた知識・知見が、外部からの情報と相俟って再び教育・研究に活用され、新たな知識・知見が再生産される。図-3に示すようなポジティブ・サイクルとしての知識創造循環の形成が大学として不可欠であり、その基盤となるものが情報基盤にほかならない。

    図3
    図-3:情報基盤による知識創造循環の形成

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