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スカラ並列技術WG経過報告


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(SS研究会ホームページ内)
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航空宇宙技術研究所
福田 正大
fukuda@nal.go.jp

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 商用ベクトル型スーパーコンピュータが世に現れて四半世紀を過ぎようとしている。90年代前半には様々な超並列型スーパーコンピュータ(MPP )の登場があり、分散主記憶型並列計算機の利用技術開発の機運が盛り上がった。これと歩調を合わせるかのごとく富士通もベクトル計算機を要素計算機とする分散主記憶型並列計算機VPP シリーズを発売した。VPP シリーズが達成したトップスピードのブレークスルーは大きく、その後の100GFLOPS 超の商用計算機の出現を促した。また、VPP −Fortran の記述性と相まって、MPP に比して実効性を引き出しやすい方式ではあったが、ベクトル計算機がもっている「市場規模」の制約から必ずしも十分な市場展開を見ていない。

 一方90年代後半には米国ベンダーが市場投入した「SMP 」マシンが、”価格の安さ”と”使い易さ”を訴えることによって、急速に普及した。当初はトップエンドマシンのピーク性能はベクトル型スパコンに比べて見劣りしていたが、最近では比肩できるほどになっている。さらにそれをネットワーク接続したクラスタ型の系列のマシンは今や top500 の上位を独占している。これらのマシンはLinpack 試験でこそその性能を発揮しているが、実際のアプリケーションではどれだけの性能を出しているのか?

 SS 研に集まるメンバーの主要部分は「ベクトル型スパコン」の重要なユーザーであり、我が国ベンダーもベクトル型スパコンの開発を続けてきた。このためややもするとSMP スパコンの実体について不十分な理解をしている恐れも考えられ得る。一つは、本当に ”安い”のか?ピーク性能に対する価格比が、たとえSMP の方が安いとしても、実効性能がベクトルの半分しかでなければ、結局価格・性能比は同じではないか。次に本当に使い易いのか?OpenMP のような言語、あるいはMPI のような言語で書かないと、きちんとした性能が出ないのであれば、本当に使い易いと言えるのか。SMP 上での自動並列化は自動ベクトル化の域に到達しているのか、できるのか?

 このような疑問に端を発しつつ、いずれにしろそれなりの市場を占有しているSMP を正しく理解し、その利用方法を検討、開発することは、これから出現するであろうより高性能なSMP マシンを使っていく上で、あるいはそのためのOS やコンパイラを開発する上で重要なことと考えられる。また、我が国の多くのセンターでもいずれ導入が進むであろうSMP スパコンの性能評価をどのようにして行うかは、調達という場面においても重要な技術課題となる。

 本WGでは主としてユーザーサイトが有するアプリケーションプログラムを対象として、SMPマシンでの処理性能の評価、プログラム記述の仕方、コンパイラが有すべき機能などを検討していく。7 月に準備会合を持ち、9 月に第1 回を開催した。ネットワークを活用した議論を進めるために富士通の「NetLaboratory 」上に、「SS研WG 」という名の「サークル」を開設した。

 具体的な技術課題の検討はこれから始まることになるが、検討対象とするプログラム候補にバリエーションを持たせるためにもメンバー以外の会員の方の協力をお願いします。また検討に参加したり内容に興味をお持ちの会員の方はNetLaboratory のSS 研WG のメンバーとして参加して頂くことも可能です。登録の仕方は事務局の方へお問い合わせ下さい。


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