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東京大学宇宙線研究所の現状と課題

  1. はじめに
  2. 分散型システムの構成と問題点
  3. 共有メモリ型サーバーを使った現在の構成
  4. まとめと今後の課題
  5. 講演OHP
東北大学大学院理学研究科ニュートリノ科学研究センター
井上邦雄
inoue@awa.tohoku.ac.jp


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1.はじめに

 東京大学宇宙線研究所は、岐阜県神岡町の山中地下1000mに、50000トンの純水槽に11200本の光電子増倍管を取り付けた実験装置スーパーカミオカンデ(SK)を建設した。そこでは、20大学以上の共同研究として、素粒子ニュートリノの観測や陽子の寿命の測定など種々の研究が24時間体制で行われている。ここで取り込まれるデータ量は平均約140kB/secで、4kmのFDDI光ファイバーを通して地上に設置されたSK専用の計算機システムに送られる。地上の計算機では、リアルタイムで反応位置やエネルギーの再構成が行われ、興味のある事象の選別とともに、検出器の状態がモニターされる。これらのデータは捨てられることなくすべて記録され、日々増え続けるデータ量は4TB/年となる。さらに各種の解析後のデータも含めると、その総量は3年の観測で約30TBにもなっている。また解析プログラムは日々改良が加えられており、すべてのデータを処理し直すリプロセスという作業がたびたび行われる。このリプロセスの作業は1年のデータを1月以内で処理し終わる程度高速に行われなければならない。また物理結果を得るためには、検出器内での素粒子反応から、その際に放出される光の吸収散乱そして光電子増倍管で検出されるまでを忠実に再現するモンテカルロシミュレーション(MC)を頻繁に行う。これらが本システムの大口の利用形態である。そのため本システムは、データ保存、リアルタイム処理、リプロセス、MCを中心にシステムの設計が行われている。
 実験開始当初は、磁気テープライブラリ(MTL)を接続した大型計算機をデータサーバーとして中心に配し、高速ネットワークで接続した10台のワークステーション(WS)をCPUサーバー、そして標準的なネットワークで接続された20台のWSを端末兼CPUサーバーとして使う分散処理型の構成をとっていた。現在は機種更新に伴い、60CPUを内蔵した共有メモリ型のサーバーWS(S-7/7000Umodel1000)を中心に配し、これをデータ及CPUサーバーとして用い、FastEthernetにスイッチ接続された40台のWSを端末兼CPUサーバーとして構成している。ここでは、分散型から共有型への変更に伴う改善点と具体的な構成例、その問題点を報告する。


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