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数値風洞ジョブスケジューラについて

  1. はじめに
  2. 数値風洞用スケジューラの機能
  3. スケジューラの実現方式
  4. 新スケジューラの処理構造
  5. 新スケジューラの有効性検証
  6. おわりに
  7. 講演OHP
航空宇宙技術研究所 計算科学研究部
末松和代(写真)
kazuyo@nal.go.jp
土屋雅子
tuchiya@nal.go.jp
三向ソフトウェア開発株式会社
エンジニアリングシステム開発部
藤岡 晃
fujioka@nal.go.jp



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1.はじめに

 航技研では、1993年2月に分散メモリ型のベクトル並列計算機システムである数値風胴( 図1参照 )を導入し、稼働を開始した。このシステムは、計算空気力学プログラムの高速実行の実現のために、航技研と富士通(株)との共同研究の結果開発されたシステムである。数値風洞は、演算処理用の166台のプロセッサエレメント(以下PEと略記する)、ジョブおよび入出力制御用の2台のコントロールプロセッサ(以下CPと略記する)、PE−CP間およびPE、PE間接続用のクロスバネットワーク、ジョブ実行に必要なファイル転送用の高速システム記憶(以下SSUと略記する)およびフロントエンドプロセッサ(以下FEPと略記する)から構成されている。なお、プログラムの実行は、翻訳処理、結合・編集処理、実行処理から構成されるが、数値風洞の場合には各PEがピーク性能1.7GFLOPSの高性能ベクトル計算機であることを考慮し、PEでは実行処理を行い、その他の処理はFEPであるFujitsu−VP2Xを使用している。この数値風洞を有効利用するためには、以下の機能が必須となる。

  ・PEの高効率利用
  ・任意のPE台数でのジョブ実行
  ・システム資源要求量・緊急度に応じた優先度の設定
  ・適切なジョブターンアラウンドタイムの保証

 汎用計算機の場合、システム効率やジョブターンアラウンドタイムなどは、Network Queueing System(NQS)等の持つスケジューリング機能によってジョブの流れを適切に制御することにより実現できる。しかし、数値風洞は並列計算機であり、ジョブ実行時に割り当てるシステム資源が汎用計算機とは異なることから、NQS等の既存機能では空きPEが発生し易い、大規模なジョブクラスを常時使用することができない、ジョブのターンアラウンドタイムが適切に制御できない等の問題が発生する。そのため、新たなスケジューリングアルゴリズムの検討を行い、運用環境や運用方針、システム独自の要望等を実現するための独自の機能を付加したジョブスケジューラを開発し、1994年10月から運用に供している。
 本稿では、航技研の数値風洞用に開発したジョブスケジューラの機能、実現方式、処理構造を紹介する。

図1 数値風洞のハードウェア構成図


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