Scientific System研究会HomeSS研HPCフォーラム2003 〜プログラム〜   ご案内
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HPCアプリの新たな領域
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1.日時2003年10月03日(金) 10:30〜17:20  懇親会17:30〜
 
2.場所汐留シティセンター24階 富士通(株)本社「大会議室」 [地図]
 
3.開催趣旨 科学技術から社会、経済にまでインパクトを与える可能性がある科学、工学における基本的な問題を大規模数値シミュレーションするハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)への取り組みが開始されたのは、今から十数年前のことである。 これらは1980年代の後半から90年代にかけてもたらされたハイパフォーマンスコンピューティングリソースの発展により支えられたものであるが、この当時挑戦的な領域として注目された気象、気候、海洋、材料物性、生物、製薬、ゲノム、素粒子、宇宙、流体及びその工学的応用等はその後のスーパーコンピュータ開発を牽引する役割を果たしてきた。 その後、超高速で大規模並列数値シミュレーションのためのスーパーコンピュータの開発、特定のアルゴリズムのための専用計算機の開発、パーソナルコンピュータの著しい性能向上、グリッドコンピューティングの可能性等、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)を取り巻く計算環境は多様化しつつある。 一方、ソフトウエア、計算モデルの観点からもミクロ現象とマクロ現象を接続するマルチスケールモデリング、異なる物理法則を接続するマルチフィジックスモデリング、いままではHPCの対象とはならなかった金融、交通、災害等の複雑な現象のモデリング技術が発展している。 これらの領域では、大規模数値シミュレーション技術、可視化技術等を通じてリアルに現象を再現、予測することが行われつつある。

今回は装いを新たにしたHPCフォーラムとして、この様に多面的に変化するHPC計算環境を見据えて、今後のHPCアプリケーションの新たな方向性を探ることを目指して、先端領域のシミュレーションに取り組んでおられる講師の方々の講演を中心に構成した。
 
4.プログラム(敬称略)
10:00〜10:30受付
座長 : 岩宮敏幸 (航空宇宙技術研究所)
10:30〜10:40
開催趣旨説明
蕪木英雄 (日本原子力研究所)
10:40〜11:40

講演 50分
QA 10分
「高頻度金融データの解析とシミュレーション技法」
ソニーコンピュータサイエンス研究所 高安秀樹
 
金融工学は市場価格の変動を確率モデル化し、様々な金融商品を生み出す寄与をしてきたが、その一方で、現実のデータとの整合性が悪いために多くの弊害も生み出している。 経済物理学は、これまで無視されてきた高頻度金融データを物理学の手法で解析し、モデル化する新しい研究分野であり、常識に囚われない数多くの成果を生み出している。 講演では、次のような話題を取り上げる予定である。
  1. 需給の安定均衡は存在しえないこと
  2. 裁定機会が頻繁に発生している証拠
  3. 市場価格の予測可能性
  4. インフレーションのシミュレーション
  5. 企業財務データのモデル化と予測
  6. 金融ネットワークのフラクタル構造
  7. 為替リスクをなくす企業通貨システム
11:40〜12:40

講演 50分
QA 10分
「E-CELL Project : 細胞のコンピューターシミュレーション」
E-CELL Project : Towards Whole Cell Simulation
慶應義塾大学先端生命科学研究所 中山洋一

冨田先生体調不良のため講演者変更になりました。(9/25)
 
我々は1996年に、細胞内の代謝全体をまるごとシミュレーションすることを究極の目的として、E-CELLプロジェクト(Tomita 1999)を慶應大学湘南藤沢キャンパスに発足させた。 M.genitaliumは現在知られている生物の中で最もゲノムが短く(58K bps)、最小数の遺伝子セット(約480個)から成り、これらはすべてWEBで公表されている。 そこで我々はTIGR研究所のClyde HutchisonやCraig Venterらと協力して、細胞の自己維持のために必要最低限の127個の遺伝子セットを選び出し、架空の「バーチャル細胞」の構築を目指したのである。

我々が構築したバーチャル自活細胞は、膜外からグルコースを取り込んでそれを解糖系によって分解しエネルギー(ATP)を生産する。 また、細胞膜生成のためのリン脂質合成系をもち、脂肪酸とグリセロールを取り込んでホスホチジルグリセロールを合成しこれが細胞膜となる。 遺伝子発現のための転写機構(RNAポリメラーゼなど)および翻訳機構(リボゾーム等)を持ち、遺伝子から蛋白質を合成する。 蛋白質は時間とともに自然分解するようにモデル化してあるので、蛋白質を作り続けないと細胞は死んでしまう。 蛋白質を合成するにはエネルギー(ATP)が必要で、そのためにはグルコースが必要である。

最近、E-CELLシステムを用いて、ヒトの赤血球細胞のプロトタイプが完成した。 これによって酵素機能を意図的に阻害させるなどの「バーチャル実験」を行い、遺伝性貧血症患者の赤血球の状態を再現することも可能となった。 現在この他に細胞小器官である「ミトコンドリア」全体のモデリングや、大腸菌の化学走性(誘引物質の濃度の高いほうへ向かっていく性質)のためのシグナル伝達系のモデリングを行っている。

細胞シミュレーション研究は今後ますます盛んになると思われるが、現在におけるもっとも大きな壁は、定量的データの不足である。 遺伝子の機能がわかっていたとしても、それらの働きの定量的なデータは少ない。 また、細胞内のさまざまな物質の濃度についてもほとんど調べられることがなかった。 これからはメタボローム(metabolome)、すなわち細胞内代謝の定量的データの網羅的解析が重要になるだろう。 慶應大学は平成13年4月より鶴岡市(山形県)に先端生命科学研究所(http://www.iab.keio.ac.jp/) を新設し、細胞モデリングのための「メタボローム+シミュレーション」という新しいタイプの研究プロジェクトを行っている。
E-CELLプロジェクト
12:40〜13:50昼食
座長 : 三浦謙一 ((株)富士通研究所)
13:50〜15:00

講演 60分
QA 10分
海外招待講演
"Recent Progress in Computational Science at NERSC"
 
The NERSC (National Energy Research Scientific Computing) Center at Lawrence Berkeley National Laboratory is one of the largest open unclassified supercomputing centers in the world, providing capability resources for computational projects in areas such as astrophysics, climate modeling, combustion, fusion, and nano sciences. In early 2003 NERSC upgraded is computational facility to a 6,656 processor IBM SP with 10Tflop/s peak, which places it at the #5 rank of the TOP500 list. NERSC also manages archival storage with 8.8 Petabyte capacity. Scientists have access to NERSC via OC-192 connections provided by ESnet. NERSC is working towards integrating these resources into a Unified Science Environment, providing grid services in particular for climate and high energy physics applications.
 
※講演は英語になります。(通訳なし)
15:00〜15:20Coffee break
座長 : 青柳睦 (九州大学情報基盤センター)
15:20〜16:20

講演 50分
QA 10分
「OCTAプロジェクト : 物質の多階層シミュレーション」
名古屋大学大学院工学研究科計算理工学専攻 増渕雄一
 
OCTAプロジェクトは,物質の物理化学を多階層的に解析するためのシミュレーションプラットフォームを構築しようとするものである. 物質の物理化学には,物質を構成する個々の分子や原子の働きに加えて,ナノからミクロにおよぶ分子集団の性質が重要であることが実験的に広く認知されてきている. このような系は,従来の分子軌道法,分子動力学法に代表される電子や原子レベルでの計算手法,および有限要素法などの連続体レベルの計算手法をそのまま適用することが難しい. そのため個別の問題毎に異なる理論モデルに基づく手法が多数提案されてきているが,実用化レベルまで汎用化されているものは多くなく,また汎用化されていても相互の連携が悪く統合的な物質シミュレーションを困難にしている. そこで我々は新たな理論手法とともにこれらを統合し,ナノレベルからマクロレベルまでのシームレスな計算解析環境を構築してきている. これがOCTAプロジェクトである.

OCTAはOpen Computational Tool for Advanced material designの略である. ソースコードまでふくめて無償公開とし,再利用や新規機能の追加などを誰でも行うことができる. 詳細についてはOCTAホームページ(http://octa.jp)をご覧いただきたい.ダウンロードも可能である.
OCTA
16:20〜17:15

講演 45分
QA 10分
富士通報告
「ナノデバイス開発のための原子スケールシミュレーション」
FUJITSU Japan(株)富士通研究所シリコンテクノロジ研究所 金田千穂子
 
ナノテクノロジーにおける原子操作、原子制御の重要性は言うまでもないが、最先端の半導体デバイスにおいても既に、厚さが原子数層から数十層分に相当するナノメートルサイズの薄膜が用いられるなどしており、構造や特性を原子スケールで制御することは、デバイス開発上重要な課題である。 原子スケールシミュレーションを構造形成プロセス技術や観測技術と併用、あるいは相補的に用いることにより、解析、機能予測、構造設計、材料絞り込みなどを効率的に行なうことができるので、ナノデバイス開発が大きく加速されることが期待されている。 最先端の半導体デバイスで用いられる極薄ゲート絶縁膜や、ナノマテリアルの代表格であるカーボンナノチューブへのシミュレーションの適用事例を紹介する。
17:15〜17:20
まとめ
青柳睦 (九州大学情報基盤センター)
17:20終了
17:20〜19:20
       
懇親会
 
5.定員 200名 (定員になり次第受付終了とさせて頂きます。)
 
6.参加費
会合(10:30-17:20) --- 無料
懇親会(17:30-19:30) --- \3,000
  
7.申し込み 受付終了しました。